富岡、浪江取材3日目。夜ノ森で桜まつりが行われているので、そちらへ行ってみようと思う。富岡駅で下車してから、さくらモール方面へ。そのまま六国を突っ切り、下町三社の杜へ。
 回転寿司アトムをいつもとは違う後ろから眺めつつ、解体されフレコンバッグに詰め込まれる廃屋を見ながら、富岡川を渡り、富岡町役場、学びの森方面へ。役場周辺は実は線量が高い。だからこそ、役場が富岡町に戻るというときに、何人もの職員が辞めたのだろう。
この位置から回転寿司アトムを見るのは初めて。
この位置から回転寿司アトムを見るのは初めて。
廃墟だ
廃墟だ
富岡川に架かる橋の上から。
富岡川に架かる橋の上から。
富岡川
富岡川
水は透き通って美しいが…
水は透き通って美しいが…
おかえりなさい富岡町、か…
おかえりなさい富岡町、か…
富岡町役場〜学びの森周辺は、実は線量は高め。
富岡町役場〜学びの森周辺は、実は線量は高め。
 学びの森を出てから、帰還困難区域との際を経由しつつ、夜ノ森へ向かう。今ではこのエリアは全てが避難指示解除された。この辺りの汚染度はさほどではないが、しかし震災前の何十倍もの空間線量の場所もある。いつの間にか「1.0μSv/h」では驚かない状態になってしまった。
 夜ノ森の桜並木へ。歩いている道は、メインの道の一本東にあるが、空間線量は常に1.0μSv/h前後だ。しかし桜まつり、人がどんどんやってくる。駐車場もいっぱいで、道に路駐している人もいる。その車から、小さい子供も犬も出てくる。メインの桜並木と繋がる場所のバリケード前で、警備員さんに尋ねてみた。
 「普段の人気のない夜ノ森とのギャップに戸惑いませんか?」
 「警備員は1年やってるけど、その前は除染をやってた。もう慣れたね。」
 「大熊で17マイクロあるところで仕事した時は怖かったね。」
 この警備員さんはいろいろ話してくれた。ありがとうございます。
 夜ノ森の桜並木を歩く。バリケードで分断されている。そんなバリケードを前にして、みんな何事もなかったかのように笑顔で談笑している。何だろう、このおかしな空間は。誰も不思議に思わないのか…
 バリケードから、向こう側を撮影していると、一眼レフカメラを抱えて厳しい表情の人が隣にやってきた。そして今も帰還困難区域の向こう側を撮影する。フォトジャーナリストだろうか。
 家族連れがバリケードまでやってきた。向こう側を指差し、「あそこだよ」と話している。自宅があるのだろうか。泣きそうな表情をしている。
 両親と彼女と連れ立ってきた風のおしゃれな男性は、「こんな目の前にあると思わなかったよ」と「この先帰還困難区域」の看板を叩いた。
 遠くを見ると、幼稚園にも上がっていない女の子や、小型犬が走り回っている。バリケードの前では厳しい表情の人が思いの丈を語る。
 ここは、なんてカオスな空間なんだろう…
除染後。
除染後。
 桜並木の道沿いにある、富岡第二中学校へ。ここが桜まつりのメイン会場だ。校庭では、様々なテントが立ち並び、それぞれのブースで食事などを出している。ステージがあり、そこではACIDMANの曲が流れている。原発事故など何もなかったかのように、そこには普通に祭りが展開されている。中には、日本原子力研究開発機構(JAEA)のブースもあった。役場のブースもあった。
 笑顔で祭りが展開されてる中で、2018年5月に見た体育館の中は、もう片付けられたかな、卒業式の準備がされたままだったな、と思って中を覗くと…まだそのままだった。その目の前で、みんな笑顔で祭りに興じている。
 何だこれは。
 頭に血が登った僕は、思わず富岡町役場のブースへと向かった。何なんだこれは? 何なのこれは? 一言モノ申すと思っていた矢先、先日Facebookで地元の人に言われた言葉を思い出した。
 「一年に一回くらい、笑顔で桜を見たい」
 頭の中が混乱した僕は、その瞬間に「空を真っ赤に塗りつぶしてしまえ」と思った。そうして出来上がったのが、詩絵本『紅』でした。
富岡第二中学校校庭
富岡第二中学校校庭
JAEAのブース
JAEAのブース
富岡第二中学校体育館
富岡第二中学校体育館
0.167μSv/h
0.167μSv/h
0.29μSv/h
0.29μSv/h
富岡第二中学校、2020年6月解体。
富岡第二中学校、2020年6月解体。
 夜ノ森の喧騒を離れ、人気のない道を歩きながら、4/5に続いて宝泉寺へと向かった。心が落ち着いた。
野良桜
野良桜
宝泉寺
宝泉寺
 宝泉寺から、富岡駅へ向かう。次々と建物は解体されていく。倒壊寸前の建物もあり、そういったものはやむを得ないとも思うが、町並みが消えてゆくのは悲しい。
 そして、僕は桜まつりの時期に一人でここに来るのは、金輪際やめようと思った。

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